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hinasoyo blog

働き方論から恋愛論まで。日々の雑感も含め、専門領域を超えて幅広く発言して行きます。

電通や博報堂を「広告会社」と呼ぶことに、 違和感ありませんか?


 僕の記憶では、1970年代~1990年代にかけて、「“広告代理店”と呼ぶのを辞めよう」といった運動のようなものがあった。「我々は“代理”でもなければ“店”でもない」「広告主のパートナーであるべきで“下請け”感の強い“代理店”は使うべきではない」「場合によっては自社サービスも開発するかもしれないし」。
 
 そういった主張がそこかしこで述べられ、「広告会社と呼ぼう!」というフレーズがキャンペーンのように叫ばれた。そして、「広告会社」という今の僕から見れば“奇妙な呼び方”が、業界ではすっかり定着した。いろいろ調べると、当時はそれなりに妥当な理由があったようだが、2020年においてはかなり違和感がある。
 
 “世界の広告コミュニケーション”を研究対象とし、英語圏の広告ビジネスに関する記事やセミナーを目にし耳にする機会の多い僕からすると、この「広告会社」という呼称は、なんとも奇妙だ。英語圏で自らの属する組織のことをAdvertising Companyと呼んでいる人々に会ったことがない。英文でAdvertising Companyと検索窓に打ち込んでも、表示されるURLのほとんどは、Advertising Agencyと変換されたうえで、検索された結果が表示されてしまう。
 
 まず、英語のAgencyのニュアンスから考えてみよう。AgencyはAgentの組織版。Agentは全権委任された人。よくスポーツ選手が海外移籍する際に、委託するような人だ。この場合のAgencyは、日本で使われる片仮名英語で言えば“パートナー”に近い。つまりAdvertising Agencyは、広告主にとっての“広告に関するパートナー”というニュアンスがある。
 
 随分前だが僕がNYの有名Advertising Agencyに、研修出向者として数か月滞在していた時、社員が自分たちの会社のことを語る時に使っていた単語は“Our Company”ではなく、“The Agency”だ。そして彼ら彼女らが発する“Agency”という単語に、僕はある種の誇りを感じた。そこには、昔日本の広告業界で持たれていた“広告代理店”という言葉についての“ひけめ”のようなものは、微塵も感じられなかった。
 
 Agencyにはもう一つ重要な要素がある。この言葉は、ある種の業態を示しながらも、実に様々な単語と結びつき得るということだ。Creative Agency、Brand Agency、Media Agency、Digital Agency、PR Agencyなどなど。これらは、担当する分野を特定しつつも、大きな意味でのマーケティング界においてクライアントのパートナーとして機能する会社であることを示している。
 
 もちろん、20世紀後期に“広告代理店”という言葉を嫌った人々の気持ちも、分からないではない。“代理”という言葉はいかにも主体性の無さを感じさせるし、“店”という言葉は、組織されていない集団を思わせる。また、税制や契約の問題なども、背景に色濃くあったようだ。
 
 そこで僕らの先輩は、代理店という言葉を捨てて、より広い意味の“会社”という言葉を採用した。“広告を扱う会社”“広告に関わる会社”といった意味合いで「広告会社」と呼ぶことにしたのだろう。
 
 しかし、21世紀に入って、状況が一変する。従来の意味での「広告」(主に4マス広告を指した)だけでは、クライアントのマーケティング・コミュニケーションも、広告会社にとってのビジネスも、上手く行かなくなってしまったのだ。「広告」は変容した。あるいは新しい定義が定着しないままに、なんとなくより広い意味を指す「広告コミュニケーション」や、「統合型マーケティング・ソリューション」などと呼ばれ始めた。
 
 「会社」という言葉が何の業態も示唆しておらず、さらに「広告」という言葉の指す範囲が漠然としてしまったことで、「広告会社」とは何をしている集団であるのかが、はなはだ分かりにくくなってしまったのが、現在の状況であろう。
 
 では、どうすれば良いのか?
 
 僕は現状のいろいろな状況を鑑みるに、「エージェンシー」という言葉を採用すべきではないかと考えている。“代理店”はいかにも古臭すぎるし。
 
 広告エージェンシー、クリエイティブ・エージェンシー、PRエージェンシー、デジタル・エージェンシー、メディア・エージェンシー、プランニング・エージェンシー、戦略エージェンシー、総合型エージェンシーなどなど。
 
 あと、「広告会社」という言葉の提案に当たっては、“広告会社自身”が自らの売り物やサービスを持つことも想定するため、「代理店」という言い方は相応しくない、という議論があった記憶がある。
 
 しかし、四半世紀以上経っても、結局のところ「広告会社」の行っている業務の大半は、クライアントが存在する“エージェンシー業務”であり、自社サービスを売っているケースはごくわずかである。
 
 ということは、呼称に関しては、その議論は特段考慮する必要はない、ということだ。
 
 むしろ、「クライアントのパートナーとしてマーケティングやコミュニケーション関係の領域で貢献する」という立ち位置を明確にするためにも、「エージェンシー」という呼称を使いたい、と思う。エージェンシーを名乗りながらも、一部で自社サービスの開発を行うことに目くじらを立てる人は、いないだろう。
 
 コンセプトもインサイトもプランニングも、片仮名英語を使っている。言語は(英語と日本語の単語は)、一対一対応はしていなから、むしろ、そのまま使った方が正確に理解されやすい、という側面が大きいのだと思う。「エージェンシー」だって、そのまま使って悪いはずもない。
 

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